simplest CAD

 前回は解集合の図のみを正射影で求めるグラフィカルな QE でしたが,関数の種類,変数の個数が手頃であれば,同様の方法により,シンボリックに QE できます.
 例えば

(1) ∃x ( a≦x≦a+2 ∧ x^2-2 x+a≦0 )

を考えましょう.人間なら a について場合を分ける所ですが,ある種の連立方程式さえ解ければ,文字通り機械的QE できます.
 すなわち,a が (1) を満たすとは,xy 平面において,直線 y=a が

y≦x≦y+2 ∧ x^2-2 x+y≦0

つまり

x-2≦y≦x ∧ y≦-x^2+2 x

の表す図形と点を共有することなので,2 直線 y=x-2,y=x と放物線 y=-x^2+2 x の共有点の y 座標さえ求めれば,(1) と等価な式

-3≦a≦1

が得られます.
 次に,全称量化を QE してみます.前回は,否定をとって特称量化に帰着しましたが,今回は直接扱います(ここがポイントです).すなわち,a が

∀x P(x,a)

を満たすとは,xy 平面において,直線 y=a 上の任意の点が図形 P(x,y) に属する,つまり,直線 y=a が図形 P(x,y) に含まれることなので,例えば

(2) ∀x ( a≦x≦a+2 → x^2-2 x+a>0 )

QE するなら

y≦x≦y+2 → x^2-2 x+y>0

つまり

( x<y ∨ y<x-2 ) ∨ y>-x^2+2 x

の表す図形に直線 y=a が含まれるという式

a<-3 ∨ 1<a

がその結果です.
 今回述べた方法は,1975年に Colins 博士が発表した CAD (Cylindrical Algebraic Decomposition) Metapress | A Fast Growing Resource for Young Entrepreneurs を用いた QE の極端に簡単な,すなわち,束縛変数,自由変数の個数がともに 1 の場合にあたり,上記の特称,全称の真偽判定方法は,空間を有限個に分割して,無限を有限に帰する CAD による QE の重要なコンセプトです.
 CAD は,発表から約35年,その実装が可能となってから約20年を経た現在においてなお,最も一般的な QE アルゴリズムであり,このブログでも順次お話して行く予定です.