QE の向かう所

 今回は現在の QE の問題点とその解決に向けた動きをお話します.
 実際に QE プログラムを使った人が共通に感じるのは,やはりスペックの低さでしょう.これまで散々美味しいことを書いておきながら今更ですか!と叱られそうですが,少し複雑な処理になると,程度の差こそあれ,何れのシステムでも
・扱える関数の種類,変数の個数,次数の「制約」
・所要時間,所要メモリー空間の長大化
という壁にぶつかります.
 後者にはハード側の進歩による無効化の道が残されていますが,それは相対的なものであり,前者については QE の作動原理に起因するものですから,問題に応じた専用のプログラムを書くか,全く新しい汎用のアルゴリズムが発案されでもしない限り,その「除去」は難しいでしょう.
 こうした状況に対し,ある研究者達は,式計算による厳密解(のみ)ではなく,数値計算による近似解を QE の処理に導入して上記の問題点を克服しようと考え,AQCS やそれに続く RSOLVER(MI-MAS: Modelování a Analýza Systémů -- Cvičení (Středa 12:45, FIT 121)),我が国にも Maple 上の SyNRAC パッケージ(http://www.jst.go.jp/kisoken/crest/report/sh_heisei15/simu/anai.pdf)といった実装例が存在します.
 RSOLVER で入力できる原始論理式は不等式,出力はあくまで近似値ですが,初等超越関数まで扱え,自由変数の個数が 1 または 2 なら出力される領域の図を用いたインタラクティブな真偽判定も可能であり,SyNRAC はコストの高い処理を数値計算で賄うハイブリッドシステムです.