0の逆元

 一般に環では|-∀y(0*y=0)なので,|-∃y(0*y=1)となる環は零環(0のみからなる環)に限る.

 これを避けて一般に体では¬(0=1)も公理とし,∀x∃y(x=0∨x*y=1)を公理にする.

 対応する選択関数の一つを1/で表すと,この公理は∀x(x=0∨x*(1/x)=1)と表せる.

 とくに,1/0については|-0=0∨0*(1/0)=1が定義となるが,これは等号の公理に従う.

 ここでsemanticを援用し,∀x(0≦1/x→0<x)の真偽を考えると,上記のように1/0の解釈は任意なので0とし,他は標準的なものとすれば,0≦1/0は真,0<0は偽.つまり,∀x(0≦1/x→0<x)を満たさない構造が得られるので,恒真式ではない.したがって,定理式でもない.

 一方,|-∀x(x=0∨x<0∨0<x),|-∀x(x<0→1/x<0),|-∀x(1/x<0→¬(0≦1/x))なので,|-∀x(¬(x=0)∧0≦1/x→0<x)ではある.

 要するに,1/xを含む項を述語の引数とする際は,¬(x=0)との連言をとるのが数学.

という,ありふれたお話でした.