自動解答系の作り方(16)

 多項式関数の微積分に対する方針は,2次関数と同じく,接線の方程式,極値やそれに対応する定義域内の要素,関数のグラフなどで囲まれた集合の面積を出力する関数を準備,適用するのみで,数学としての面白みにやや欠ける為,後回しにしていたのですが,少し書き始めています.

 で,引っかかるのはやはり問題文です.

 例えば,本年度の最後にある

 lとDで囲まれた図形のうち,不等式x≧0の表す領域に含まれる部分

なるくだり.ここは「含まれる」などと言わず,そのまま

 lとDで囲まれた図形と,不等式x≧0の表す領域との共通部分

とするのが適当(図形や領域は点集合なので).

 また,ここに限ったものではないのですが,一方で「原点を通る放物線をDとする」としているのに,その直後では「〜とする」はなく,いきなり「面積Sを求めよう」となっています.「教科書でもよくSを用いるので」なのかも知れませんが,なら「Dは判別式に用いるのが高校では普通では?」と言いたくなります.勿論,対象のクラスとそれ自身を表す記号を直結させ定義を兼ねる流儀は「実数x」などのように卑近なものですが,上記の場合は,放物線とその直後の面積とで異なる流儀になっている点(というか,それで気持ち悪くないこと)は如何なものかと思います.

 さらに,2011年度のベクトル同様,定義と導出過程の順に逆転があります.すなわち

 曲線Cの接線で,点Aを通り傾きが0でないものをlとする

がlの定義であり,システムはこれに基づいて直ちにlを表す方程式を求め記憶します.ところが,問題文は

 lの方程式を求めよう.lとCの接点のx座標をbとする

と記憶喪失になったかの如くに続いています.数学に忠実なシステムとしては定義の時点で,例えばその接点のx座標は-1/2であることを認識しており,このbは-1/2にしか見えません.事実接点のx座標は-1/2なのですから(笑).したがって,それに続く,bについての方程式?の係数,および,根の一方を正答することはできません.まぁ,これは数学ではなく入試問題であり,人間の解答者(及び作問者)が,定数記号と変数記号とを混同していく様をトレースする流れなのですが,今回のシステムとしては迎合せず,得点にならずとも恥じるところはないという方針を採ります.なお,2012年度のベクトルではいきなり定義ではなく,そのwell-definednessを変数を用いて確認する好ましい(というか当然の)構成になっています.